日本銀行の雨宮正佳副総裁は、中央銀行がデジタル通貨を発行することについて慎重な姿勢を示し、「日本銀行は現在のところ、デジタル通貨を発行する計画を持っていない」と語った。10月20日に名古屋で開催された日本金融学会の講演の中で語った。また仮想通貨が決済手段として普及する「可能性は低い」とも指摘した。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)について、雨宮副総裁は「金融政策の有効性向上や金融安定に本当に寄与するかについて、検討すべき点が数多く残されている」と語る。
例えば、デジタル通貨は電力に依存する点をあげ、地震による停電のリスクも考慮すれば、現金を無くすことは決済インフラの安定性からみて現実的ではないという。
また金融システムに問題が行った場合、従来の銀行預金からCBDCへの資金シフトが起こり、取り付け騒ぎが「デジタル化された形で、より急激に起こる」リスクがあると語る。
さらにデジタル通貨を発行した場合、銀行の信用仲介を縮小させ、経済への資金供給に影響を及ぼす可能性も指摘した。
結論として、4月のイベントで雨宮総裁が講演したように、中央銀行と民間銀行による「二層構造」こそが現実的な選択肢だと改めて強調している。
雨宮副総裁は講演の中で仮想通貨の将来性についても触れ、仮想通貨が支払決済手段として広く使われる可能性が低いとも語った。既にある法定通貨に比べ、信用をゼロから築く必要があること、またマイニングのための膨大な計算や、それに伴う電力消費などのコストが掛かることが、ハードルになると指摘している。
その一方で、分散型台帳技術(DLT)やブロックチェーンについては「有望な技術」と期待を寄せる。こういった技術によって、取引や決済の効率化が期待できると話す。実際に日銀は欧州中央銀行とともに、DLTの共同研究「プロジェクト・ステラ」を進めている。
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