6日の浦和競馬10レースで1番人気タマモサーティーンに騎乗した大井競馬所属の的場文男騎手(61)が快勝。1973年10月16日の初騎乗以来、通算4万562戦目で地方競馬通算最多勝記録タイとなる7151勝を達成した。鉄人の愛称で知られる川崎の佐々木竹見元騎手(76)が2001年7月に樹立した大偉業についに肩を並べた的場。その根本には“バケモノ級”の強靱な肉体と他ではマネできない秘技があった。 道中は大逃げする馬を見る形で絶好の3番手。勝負どころで自ら追い上げて直線先頭に立ち、後続の追撃を1馬身振り切ってゴール板を駆け抜けた。単勝1・5倍の断然人気に応えて17年ぶりの快挙を成し遂げた的場は「ここまで来られたのは関係者、ファンの声援のおかげ。喜びと感謝の気持ちでいっぱい」と胸をなで下ろした。続く11レースは2番人気7着で単独トップこそならなかったが、新記録へ「いつもの気持ちで、一つひとつ大事に乗って。長引かせて迷惑をかけているので、早く決めようと思っています」と前を向いた。 タイ記録をもたらしたタマモサーティーンは“因縁のパートナー”だった。先月17日、同じ浦和で同馬に騎乗した的場は直線で後続を引き離しながら、ゴール前で左前方に投げ出されて落馬。物見(馬が何かを見て驚くこと)が原因だったが、的場の足が着地したのがゴール入線後でセーフ判定となり、1着が認められた経緯がある。 数多くの困難を乗り越え、ジョッキーひとすじで45年。デビュー間もなく頭角を現して大記録を打ち立てた“川崎の鉄人”に対し、的場は重賞初Vは5年目の1977年。その後、83年に大井リーディングに輝くと85年から20年連続でトップに立った(02、03年は全国1位)。積み上げた重賞タイトルは実に153。還暦を迎えてからも地方最高齢重賞勝利記録(61歳3か月23日、17年12月30日=東京シンデレラマイル・ニシノラピート)、地方競馬通算最多騎乗記録(18年3月27日)を次々に塗り替えている。 その一方であの騎乗フォームでもファンを魅了してきた。全身を上下に激しく揺さぶり、両ヒザを締めて腰をグイと入れる…“的場ダンス”と称されるこのスタイルは他のジョッキーがマネすれば逆効果になると言われる特異な技術だ。 落馬による大ケガも幾度も克服してきた。07年には内臓を損傷しながら数か月で復帰。今年6月15日の川崎競馬では左ヒザを20針も縫うアクシデントに見舞われた。今も傷跡は痛々しいが、地方競馬のレジェンドは「2か月は乗れないと医者に言われたんだ。でも抜糸して4日後には攻め馬にも乗っていたよ。『バケモノ』と医者に言われたよ」と事もなげに笑い飛ばした。 1日の勝利から21戦白星に恵まれず、生みの苦しみにもがいた末の価値ある勝利。前人未到の大記録がいよいよ目の前に迫った。「何とかタイ記録まで来られました。あと1勝。一生懸命頑張ります」とかぶとの緒を締めた的場。歴史の扉をこじ開けるべく、7日は浦和競馬場で10、11レースに騎乗する。
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