[ロンドン 20日 ロイター] – 仮想通貨ビットコインの価格は一時に比べて落ち着き、決済通貨としての基本的特徴である「安定性」を満たし始めた。ところが決済における利用は今年劇的に減っており、投機的資産からまともな代替通貨への脱皮に苦労しているようだ。
ブロックチェーン調査会社チェイナリシスのデータによると、主要な決済処理機関によるビットコインの取扱高は、昨年12月には4億2700億ドルだったのが、今年9月には9600万ドルと80%近くも減少した。相場が落ち着けば決済手段としての利用が広がるとの期待が裏切られた格好だ。
大手金融機関や仮想通貨業界の関係者は、ビットコインを決済通貨として羽ばたかせるため、インフラの向上を模索している。
UBS(ロンドン)のストラテジスト、ジョニ・テベス氏は「新たな通貨になるには安定性の要件を満たす必要がある」とした上で、「しかしビットコインが主流通貨になるのに必要なのは拡張性、つまり通常の通貨並みの価値、量を処理できる能力だ」と語る。
拡張性とは、1秒当たりに大量の取引を処理できる能力。ビットコインが依拠するブロックチェーン技術は、1秒当たりの処理能力が主要クレジットカード会社に比べてほんのわずかにとどまる。これでは利用拡大は見込めない。
ビットコインは昨年12月に2万ドル近くに達した後、これまでに75%下落して20日時点では4500ドルとなった。足元で30%も急落するなどまだ値動きは荒いこともあるが、10月は米国株よりも小幅な動きにとどまるなど、今年は比較的落ち着いている。
ビットコインの決済利用に関し、まとまったデータは存在しない。しかし個々の決済処理機関のデータを見ると、減少傾向が読み取れる。ブロックチェーン調査サイト、OXTによると、例えばバンクーバーのコインペイメンツでは、1月から10月にかけて処理高が半分以下に減った。
コインペイメンツはコメント要請に応じていない。
<ライトニングネットワーク>
「拡張性」の問題に対処するため、一部で技術開発が始まっている。
「ライトニングネットワーク」は、決済を迅速化、低コスト化するために設計されたもので、ブロックチェーン技術に付加することが可能なコード。まだ開発途上だが、処理能力と利用が拡大し始めている。
データ集計会社1MLによると、同ネットワークに接続する端末は8月以来25%以上増えた。
ユーザーによると、ライトニングネットワークを使えば、ブロックチェーン上のように時間のかかる処理を経なくても2者間の送金が可能なので、人気がある。
フィンテックのスタートアップ企業リボルトのエド・クーパー氏は「ライトニングはビットコインの拡張性問題を一部解決してくれる。決済をビットコインの世界に送り込んでくれる」と話した。
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