【凱旋門賞】海外競馬知る矢作調教師が、外国馬勢を独自分析!

◆凱旋門賞・仏G1(7日・芝2400メートル、パリロンシャン競馬場)  リアルスティールでドバイ・ターフを制し、海外競馬にも精通する矢作芳人調教師(57)=栗東=が、現地で観戦する予定の今年の凱旋門賞でクリンチャーが戦う、強力な海外勢についての独自の分析を披露した。  日本競馬界を代表する海外通トレーナーの見立てはエネイブル“1強”だった。約11か月ぶりの復帰戦でオールウェザー(AW)のレースを選ぶ、異例の過程を踏んでの参戦。しかし、矢作調教師の評価は全く揺らがない。  「エネイブルがレースの中心と言うことは外せない。(AWでの前哨戦は)トモとか筋肉的な負担が軽いから、凱旋門賞のためにしっかり叩くという意味では“あり”だと思う。俺みたいな変わった調教師なら、よくやるんじゃないかな(笑)。いいひと叩きだったと思う。昨年の強さには本当に驚かされたからね」。  ただ、「負かすんじゃないかと思うなら…」と切り出したのが3歳牝馬のシーオブクラスだ。  「この馬は相当に強いと思う。(父が)シーザスターズで奥手だから、これからどんどん良くなってきそう。3歳牝馬で古馬の牡馬相手に(斤量)4・5キロ差、エネイブルとも3キロ差。ああいう(タフな)コースで3キロは大きいと思う。(騎乗予定の)ドイルは地味だけど、普通にうまいしね」  上位人気の牝馬2頭の強さは素直に認めるが、調教師の中で「ばくち打ち」と自己分析するトレーナー。他の人気馬には、不安な面を指摘する。  「クラックスマンはモズアスコットと同じフランケル産駒で注目してるけど、本質は2000メートルだと思う。競馬はレベルが上がるほど、その馬の本来の距離でしか通用しない。走り方などから、ちょっと長いかな。ヴァルトガイストは(圧勝した)フォワ賞のレベルがどうなのかだよね」  この人気2頭より、ヒモ穴として口調が熱くなった馬が3頭いる。  「クロスオブスターズとエイダン(オブライエン調教師)のところかな。エイダンはライアン(ムーア)が何に乗るかだろうけどね。キューガーデンズはレースぶりに成長力を感じるし、カプリとクロスオブスターズは個人的に何となく、俺が好きなタイプなんだよ」  凱旋門賞は大外から突き抜けた86年のダンシングブレーヴの走りに衝撃を受けて以来、常に憧れのレースだった。今年はクリンチャーを送り出す前田幸治オーナーとともに現地で観戦する。  「自分自身は1回もゲートに入れてない(出走させたことがない)ので、悔しいばかり。今回は新しいロンシャンの厩舎や装鞍所の位置などを見て、将来につなげたいと思っています。クリンチャーにとって楽ではないと思うが、道悪がうまいという適性のある馬を連れて行くあたりはさすがだなと思う。厳しい戦いにはなると思うけど、少しでも頑張ってほしい。挑戦しないことには勝てませんから」  ◆矢作 芳人(やはぎ・よしと) 1961年3月20日、東京都生まれ。57歳。高校卒業後にオーストラリアで修行した後、84年に栗東トレセン入り。04年に調教師試験に合格し、05年に厩舎開業。08年11月16日に史上最速でJRA通算100勝達成(当時)。10年朝日杯FS(グランプリボス)でG1初制覇し、12年日本ダービー(ディープブリランテ)も勝った。JRA通算555勝。重賞は30勝(うちG1・4勝)。海外では16年ドバイ・ターフをリアルスティールで制覇。毎年、米国とヨーロッパ、豪州のセリへ頻繁に足を運んでおり、今年の安田記念を制したモズアスコットは15年米キーンランドセプテンバーセールで落札した。

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