芝とダートで、これほど駆けっぷりが一変するとは−。 やっぱり、得手不得手ってあるんだなあと思うのは、美浦の相沢郁(いくお)厩舎(きゅうしゃ)に所属するキタノオドリコである。 父エスポワールシチー、母ブライドウッド、母の父ダンチヒという血統の牝の2歳馬(鹿毛)。目下3戦して、次のような成績を残している。 8月18日 新 馬 芝2000メートル 14着 9月8日 未勝利 ダ1200メートル 2着 9月30日 未勝利 ダ1200メートル 1着 デビュー戦の新馬は、好位に付けていったものの、3コーナー過ぎて早々と脚さばきが怪しくなり、あとは後退する一方で、勝ち馬から実に30馬身以上も離された大差のシンガリ。 ところが2戦目、ダートに舞台を変えたら一変したのだ。ハイペースで逃げまくり、わずか3/4馬身差の2着に粘ってみせたのである。 そして3戦目、単勝オッズ1.8倍という断然の1番人気に推され、その支持に応えて、スタートから一気の逃げ切りを決めたのだ。あまりの手応えの良さに、鞍上の石川裕紀人騎手は、最終コーナーからゴールまで、またがったままノーアクション。それでも後続に7馬身の差をつけていた。この速さなら、クラスが上がっても好勝負間違いなしだろう。 それにしても、この馬は名前もいい。キタノオドリコ。英訳したら、ノーザンダンサー(Northern Dancer)である。 血統ファンはよくご存じの通り、ノーザンダンサーは1961年にカナダで生まれた歴史的名馬で、ケンタッキーダービー、プリークネスの米2冠を制し(3冠最後のべルモントSは3着)、種牡馬としてはニジンスキー(英3冠)やノーザンテースト(日本で11年連続首位種牡馬)を送り出した。実はキタノオドリコは、父母両系からこのノーザンダンサーの血を引いており、それゆえの命名と思われるのだが、この先、重賞路線を騒がすような馬になってくれたら、面白いなあ。 (競馬コラムニスト)
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